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犯罪被害者等の人権

  平成17年(2005年)4月に犯罪被害者とその家族・遺族(以下「犯罪被害者等」という。)の権利利益の保護を明文化した「犯罪被害者とう基本法」が施行されるなど、犯罪被害者等の人権が大きく取り上げられるようになったのは比較的新しいことです。
  犯罪被害者等についても、基本的な「個人の尊厳」や「プライバシー」などが尊重されなければならないことは当然であり、犯罪被害者等は「可哀想だから」保護されるのではなく、基本的人権の尊重という観点から当然支援されるべき立場にあります。犯罪による被害は、直接の被害者だけでなく、その家族などの精神面や生活面にも大きな影響を与えるものであり、これらの間接的被害も含めると被害を受けている人は相当数に上ります。
  また、性犯罪に係わる事件では、被害者のさまざまな心理的要因や再被害を恐れること等により、被害にあっても警察に届けたり、裁判に訴えたりしない場合も相当数あり、実際の数字は捜査機関に被害申告した件数を遙かに上回るとさえ言われています。
  犯罪被害者等は、生命、身体、財産上の直接的な被害だけでなく、事件にあったことによる精神的ショック、失職・転職などによる経済的困窮、捜査や裁判の証人出廷などの過程における精神的・時間的負担、無責任なうわさ話、プライバシーをも侵害しかねない執拗な取材・報道によるストレス・不快感など、被害後に生じる「二次的被害」に苦しめられる場合もあります。
  特に、大きな精神的・心理的衝撃を受けることにより、トラウマ(心的外傷)(※1)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)(※2)の症状が残ることもあり、犯罪被害者等が受ける精神的被害は深刻です。
  欧米を中心とする諸外国では、犯罪被害者の権利として、①個人として尊重されること、②加害者の刑事手続き等に関与し、知る権利、③被害回復を求める権利、④物質的・精神的・心理的・社会的支援を受ける権利等を確立し、犯罪被害者等の法的地位を充実する法制度を整備するとともに、多様な支援を提供する民間の被害者支援団体が組織され、国と社会をあげて総合的な犯罪被害者等のための施策を推進しています。
  近年、日本でも、犯罪被害者等の問題に対する社会的関心が高まる中、改正刑事訴訟法「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」(「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」を一部改正、改題。)及び、「犯罪被害者の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」が施行され、犯罪東被害者等の保護や救済が図られてきています。
  しかし、欧米に比べ、日本では、犯罪被害者等のための施策がいまだに遅れていると言えます。犯罪被害者等の人権が侵害されるケースはさまざまですが、人権の尊重を基本とした、犯罪被害者等のニーズを踏まえた各種施策を推進する必要があります。

(※1)トラウマ(心的外傷)
 犯罪や事故による被害、自然災害、テロ被害、虐待、家族や友人の死等の個人では対処できない衝撃の大きな出来事に遭遇したときに受ける心の傷をいいます。たとえば、自然災害などで大切な人を失ったことにより、心に深い傷を受け、事件連想させる不快な場所や人間関係を避けたり、外出ができなくなったり、それを忘れるために仕事などにのめり込んだりするなど、トラウマによる反応は様々です。また、結果としてPTSDの症状を示すこともなります。
(※2)PTSD(心的外傷後ストレス障害)
 事件等の出来事によりトラウマ(心的外傷)を受けた人が、その出来事の数週間から数ヶ月後に「その時の苦痛をたびたび再体験する」「事件等を思い出させる行為や状況を回避する」「緊張感からくる不眠や、ビクビクしたりする状態が長時間続く」などの持続的な精神的、身体的症状を1ヶ月以上呈することをいいます。治療を受けるなどにより徐々に回復します。

犯罪被害給付制度

  殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた犯罪被害 者の遺族及び重傷病又は障害という重大な被害を受けた犯罪被害者に対して、国が犯罪被害者等給付金を支給し、その精神的・経済的打撃の緩和を図り、再び平穏な生活を営むことができるよう支援する制度です。

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